読書日記 『浮世の画家』

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     カズオ・イシグロの長編2作品目。
     なんだか純粋な日本人、もちろんカズオ・イシグロは英国籍を取得するまでは日本人だったわけですが、が書いた作品、いやそれ以上に日本的な作品というのが感想。なにも知らずに読んだら、この作品が英語に翻訳されたと思うに違いない。

     内容は、戦時中に尊敬を得、高い地位にいた画家が、戦後には、その作品が戦争を賛美し、若い者を無意味な戦争へと駆り立てたという事実に苦しむ晩年を描いたもの。こう書くと、最初から最後までこの主人公である画家が苦しんだという感じがするかもしれないけど、そうでもない。
     画家はむしろ、そのような影響を与えた自分の作品に一種の誇りを持っていたといえるかもしれない。ただ、その影響が次女の結婚話に出てくることで、少し考えを改めていったというのかな。そして、自分の罪を明らかにし、そのことに反省をするわけ。
     でも、物語の最後の最後のほうで、確かに作品は戦争を賛美する面をもったかもしれないけど、その影響は微々たるものだったのではないかというふうな感じになる。
     実際の話、戦争中に指揮をあげるために利用された唄や絵画は、それがどれほどの影響があったのだろうか。戦後、それらの作品を作り上げた芸術家たちが随分と非難されたようだけど、それは後付けでしかなく、結局、戦争は戦争でひとりで暴走をし始めていったんだというのが真実じゃないのかな。唄や絵で命を投げ捨てるってのは多少大げさなのかもしれない。
     ただ、どこかに戦争の責任を押し付けたかったのではないだろうかなと思うんだな。

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